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You Must Believe in Spring Bill Evans

You Must Believe in Spring
Bill Evans
おすすめ度 ★★★★★


このビル・エヴァンスはどうしようもなく悲しい。悲しいだけでなく、悲しさを昇華した美しさに魅了される。エレイン夫人が亡くなったのは1976年。翌77年には音楽教師だった兄ハリーが自殺している。そうした私生活上の不幸な出来事が本作に不安な影を投げかけているのだ。実際1曲目のワルツはエレイン夫人に捧げる曲だし、4曲目はハリー追悼曲で、その曲名は「フォー・オール・ウィ・ノウ」に登場する“ウィ・メイ・ネヴァー・ミート・アゲイン”という歌詞に由来する。なんでもエヴァンスはロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイのデュエットによる「フォー・オール・ウィ・ノウ」をハリーに聴かせてもらったことがあるのだという。共演はエディ・ゴメスとエリオット・ジグモンドで、本作はゴメスが参加した最後のアルバムでもある。

エヴァンス・トリオというと一般に三位一体のインタープレイが有名だけど、本作はどちらかというとエヴァンス主導の演奏。録音は77年。ワーナーでの第1作ながら、発表されたのはエヴァンスの死後だった。(市川正二)
※ オリジナル・アルバムに3曲追加した[Bonus Tracks]盤です。
Disc:1
1 B Minor Waltz (For Ellaine)
2 You Must Believe in Spring
3 Gary's Theme
4 We Will Meet Again (For Harry)
5 Peacocks
6 Sometime Ago
7 Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless)
8 Without a Song [#][*]
9 Freddie Freeloader [#][*]
10 All of You [#][*]


★★★★☆ 2008-01-18 センチメンタルならばいいのか?
トリオの演奏においてエヴァンスへの比重が非常に大きいという点では、エヴァンス・トリオの中でも異色といえるでしょう。その分、愛さずにはいられない作品ではありますが、感傷的な面ばかり強調され、冷静な音楽的な評価が付けられていないアルバムといえる気がします。トリオの作品としては、この後、活動するラストトリオの印象からでしょうか、創造性に乏しいと感じざるを得ません。個人的には、ソロでこれらの曲を演奏、録音していたならば、ビル・エヴァンスのアルバムとして「アローン」を遥かに上回る、深く美しいものになったにと感じますが、エヴァンストリオの作品としては、エクスプロレーションズやコンセクレーションを上回るものであるとは言いがたいです。

また、親族の死や曲のタイトル、そして、その後に迎える本人の死とからめて、必要以上にこのアルバムに意味を加えるリスナーが多い気がします。例えば、マッシュのテーマの副題「Suicide is painless」を、エヴァンスの自殺願望を裏打ちするような解釈が見受けられますが、M.A.S.H.はこのアルバムが録音された頃は毎週放送されていたシチュエーション・コメディーです。(原作が映画、その後ドラマになって放送。副題は映画化の際に監督ロバート・アルトマンの息子の書いた歌詞に由来。)アメリカ人にとっては、「あー、あの『マッシュ』のテーマ!」となる曲で、自殺をイメージする曲ではありません。純粋に音楽的な見地から考えれば、コメディー・シリーズのテーマソングであるこの曲の根底に、本来の美しさとその発展性をエヴァンスは見つけだしレパートリーに加えたのだと思います。Someday My Price will come やAlice in Wonderlandに劣らない発展性を見たからこそ、エヴァンスはラストトリオの演奏にこの曲を加えたのではないでしょうか。


★★★★★ 2007-08-22 Bill Evans後期の最高傑作
Bill Evansで一番好きなアルバムは?と聞かれれば自分は「Explorations」を選ぶ。
では好きなアルバムを3枚選べと言われれば、このアルバムは是非入れたい。
この「You Must Believe In Spring」は、スコット・ラファロ時代のアルバムに匹敵する素晴らしい内容だ。
曲は1曲目から7曲目まで全曲美しく(そして物悲しく)文句のつけようがない。

★★★★★ 2007-07-08 美しき感傷
もう20年以上前になります。NHK-FMで、ビルエヴァンスの"We will meet again"が放送されました。ピアノソロとトリオ演奏の2種類です。感傷的で、きれいな曲だなあ、と思いました。
時折、CDをさがしましたが、店先には置いてありません。国内盤には入っていないのです。
今回、輸入盤を入手できて、本当にうれしかったです。

さて、その"We will meet again"です。
ビルエヴァンスのピアノソロがひとしきり続き、エディゴメスのベースがすっと入ってきます。背筋が震えるように美しい。ぞくぞくしました。

ほかの曲も、全体に感傷的できれいです。私の大事な一枚です。

★★★★★ 2007-06-24 比類なき悲しさと空虚感が乾いたピアノの音色から感じ取れました
人の寿命というのは予測がつかないものですが、彼の場合は死期を悟っていたように感じます。このアルバム制作の直前、元の妻エレインは地下鉄へ飛び込み、彼の兄ハリーも銃で頭を打ち抜くという悲劇が相次いでエヴァンスを襲います。
そして自身の麻薬中毒による健康障害もあり、精神的にも肉体的にも追い詰められた状態でこの『You Must Believe in Spring』が作成されました。彼の「白鳥の歌」とでも言うべき悲しみがどの曲からも滲み出ています。

耽美派と呼ばれ、叙情的なピアノの表現者として、ピアニストの中でも最高ともいえる感性の持ち主ですので、身の上の悲しい出来事の連続により、精神的なダメージは図ることの出来ないほどで、深く傷ついていったのでしょう。

冒頭の「B minor waltz (for Ellaine)」には、寂寥感、無常観とでもいうべき雰囲気が漂っています。なんて悲しい音なのでしょう。自分の心の闇を覗き込み、そこに潜む悲しい思い出を音に表したような音楽が続きます。やるせなさ、という軽い感情ではなく、諦観ともいうべき心境に達していたのかもしれません。

「We will meet again (for Harry)」も同様です。美しい音楽ってなんて悲しいのだろう、という感覚に襲われます。乾いたピアノの音色が一層悲壮感を募ります。
そして7曲目(オリジナル・アルバムのラスト曲)の「MASH (theme)」の副題が「Suicide Is Painless(痛みのない自殺)」であることが、このアルバムのコンセプトを象徴していると言えましょう。

★★★★★ 2007-05-04 かくも美しきピアノ
1977年8月23-25日、ハリウッド、キャピタル・スタジオで録音。プロデューサーには若き日のトミー・リピューマの名を見ることが出来る。

1曲目『B minor Waltz』は最初の妻とされるエレイン(一般には結婚したと考えられていたが、正式には結婚していなかったとされる)に捧げられている。ビル・エヴァンスと別れたエレインはすぐに自殺してしまった。それは1976年のことだ。4曲目『We will meet again』は兄ハリーに捧げられている。音楽教師でピアノの導き手だった兄ハリーも1977年に自殺している。この曲は兄に教えて貰った曲からきている。

そしてオリジナルではラスト・ナンバーである7は副題が『Suicide Is Painless』である。ビル・エヴァンスが死を思い浮かべながらこのアルバムでピアノを弾いていたのは間違いないだろう。彼の死はわずか3年後の1980年9月15日である。

死の影で内面的に破壊し始めていた彼のピアノは何故かくも美しいのだろう。間違いなくビル・エヴァンスのアルバムで最も美しいピアノはこの作品だ。眼を閉じて聴けば彼の思いを垣間見るような気になるのは僕だけだろうか。心にシミル作品だ。

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